N高、ニコ動流で生徒数日本一 海外大合格者は全国2位

N高、ニコニコ動画流で生徒数日本一 海外大学の合格者は全国2位

N高「通信制への偏見打ち破る」 ドワンゴ川上顧問

N高「通信制への偏見打ち破る」 ドワンゴ川上量生顧問

角川ドワンゴ学園が運営する「N/S高」が教育業界での存在感を高めている。通信制高校としてオンラインでの学びなどが受け、2校合計の在籍生徒数は3万人が目前に迫る。海外大の合格者数は全国2位に。少子化の中でも生徒数を伸ばし続ける「ネットの学校」の人気の理由を探った。

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5月下旬、東京・新宿にある「N/S高新宿代々木キャンパス」の教室では、約100人の生徒がグループワークに取り組んでいた。「私はデザインの製図を担当するね」「プレゼン資料は僕に任せて」。授業というよりも、まるで企業の会議のようだ。

生徒たちが取り組んでいるのは、バンダイナムコエンターテインメント(東京・港)が発売予定のゲームを題材にした衣装のデザインだ。学内でのプレゼンテーションを経て、ゲームの開発チームが審査員を務めるコンテストに応募する。入賞すれば実際にキャラクターの衣装に採用される。

この授業は、N高の通学コースの生徒を対象にした課題解決型の学習プログラム「プロジェクトN」。企業や公的機関などが向き合う課題の解決をめざし、思考力や表現力、IT(情報技術)スキルなどを身につける。授業に参加した2年生の女子生徒は「プロジェクトNは通学コースを選んだ理由の1つ」と話す。

N高等学校(沖縄県うるま市)は2016年の開校以来、積極的にオンラインを活用してきた。オンラインで学ぶ「ネットコース」やキャンパスに通う「通学コース」など5コースがあり、どのコースも卒業に必要な国語や数学などの必修授業はオンラインで受講する。必修授業は独自の学習アプリ「N予備校」を使う。1本あたり5〜10分の映像を視聴した後にテストを受け、合格したらリポートを提出する。

1万コンテンツから「好き」見つける

生徒が興味のあるものを見つけられるように、必修以外のコンテンツもリアルやオンラインで約1万をそろえる。大学受験講座やプログラミング、Webデザインなどを学べるほか、宿泊型の職業体験など充実している。

ネットの高校だが、生徒同士の交流もある。例えばオンラインで仲間と楽しむ「ネット部活」がその1つ。「投資部」では、特別顧問の村上世彰氏が創設した財団や学園から拠出された運用資金を元手に、株式投資に挑戦する。他にもゲーム内で生徒が集まり冒険する「ネット遠足」や、文化祭など盛りだくさんだ。

またN高は門戸を広く開いているのも特徴だ。一部のコースは入試がなく、誰でも入学できるようにした。学費はネットコースで年間6万3000円から(就学支援金が支給された場合の実質負担額で、履修単位数や世帯年収などで異なる)。N高の奥平博一校長は「オンライン学習は個別での対応がしやすく、実は幅広く生徒を受け入れやすい」と胸を張る。

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こうした革新的な取り組みが注目され、N高の生徒数は大きく伸びた。20年に在籍生徒数は1万5000人近くになり、日本一に。21年には定員増のため、S高等学校(茨城県つくば市)を開校した。両校の在籍生徒数は24年3月時点で合計2万8000人超と、16年の18倍となった。

そもそもN高設立のきっかけは、奥平氏が通信制高校で働く中で感じた違和感だ。「通信制は社会的な評価が低く、通っているだけで問題があるのではと思われることもある」(奥平氏)。一方で通信制は時間を自由に使えるという利点もある。だからこそ「通信制高校のイメージを大きく転換することが必要だ」と感じた。