超新星、異常に大きな恒星の破局的爆発だ。安定している期間、その星はずっと巨大な質量によってそれを圧し潰そうとする重力と、内部の核融合反応によってそれを吹き飛ばそうとする輻射圧との間で均衡を保ち続けている。輻射のエネルギーは光子によって星の表面へと運ばれるが、その途中で何度となく物質による吸収と放出が繰り返されるため、移動の速度は極めて遅い・・・
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超新星、異常に大きな恒星の破局的爆発だ。安定している期間、その星はずっと巨大な質量によってそれを圧し潰そうとする重力と、内部の核融合反応によってそれを吹き飛ばそうとする輻射圧との間で均衡を保ち続けている。輻射のエネルギーは光子によって星の表面へと運ばれるが、その途中で何度となく物質による吸収と放出が繰り返されるため、移動の速度は極めて遅い。星の内部で発生するエネルギーが。表面から輻射されるエネルギーを上回る結果、中心部の温度は上昇していく、どこまでも。やがてそれは六百億度に達する。この数字がどのくらいのものか、実際には誰にも想像すらできないだろう。
単一宇宙のイメージ
だが、この臨界温度で、ニュートリノの生成率が突然空隙に膨大な数に増大するのである。ニュートリノは物質とほとんど相互作用しない。そのため恒星の内部をまっすぐに突き抜けて、それまで光子となって出ていったエネルギーを運び去っていく。そのため、ふいに光子の生成がぐっと減少し、それに伴って、星自体の重力による圧力を支えていた輻射圧も急激に減少する。
この時点において恒星は、突然猛烈な勢いで潰れ始めるのだ。
その過程で、重力のエネルギーが一気に放出される。速すぎて恒星の外層はそれを吸収しきれない。そのため外層は空間へ吹き飛び、超新星が誕生する。その爆発の反作用が、既に潰れかけている中心部を、更に強く、早く、内側へ向けて圧縮する。そして、超新星の中心部は、ブラックホールにまで圧縮されてしまう。
この超新星の中でも極めて質量の大きな恒星の爆発は、極超新星と呼ばれる。極超新星爆発からは、ガンマ波バースト(Gamma Ray Burst、GRB)が起こされる。それはガンマ線が数秒から数時間にわたって閃光のように放出され、そのあと地球からでもX線の残光が数日間見られるようになる。これによってブラックホールも形成される。
多くのガンマ波バーストが何十億光年も離れた場所で生じている事実は、この現象が極めてエネルギーが高く(太陽が百億年間で放出するエネルギーを上回る)、めったに起こらない現象である事を示している。ひとつの銀河で数百万年に一度しか発生しないのだ。これまで観測された全てのガンマ波バーストは銀河系の外で生じている。
ガンマ波バーストが銀河系で生じ、地球方向に放出された場合、大量絶滅を引き起こすと推定されている。ガンマ波バーストの継続時間は短いので、被害は限定されるが、十分に近い距離で起きた場合は地球大気に深刻な被害をもたらし、オゾン層が破壊されて大量絶滅を引き起こす可能性もあるとされている。ガンマ線バーストによる被害は、同じ距離で起こる超新星爆発による被害よりは小さくなると考えられている。
古生代デボン紀と石炭紀の境界にあたる約三億五千九百万年前に起きた大量絶滅は、地球から比較的近い場所で発生した超新星爆発によって引き起こされた可能性があるとする研究もある。デボン紀後期に起きた大量絶滅では、海洋生物を中心におよそ八割の生物が絶滅した。この時代の地層からは何世代にも渡り紫外線の影響を受け続けたとみられる植物の胞子の化石が見つかっており、超新星爆発によるガンマ波バーストの原因によりオゾン層が破壊された証拠とみられている。
超新星爆発で地球にはわずか10秒間しかガンマ波が降り注がなくても、地球大気のオゾン層の約半分がなくなる可能性がある。消滅したオゾン層の回復には少なくとも5年を要するとされている。オゾン層の破壊によって、太陽からの紫外線が地上や海・湖沼の表面近くに生息する生命の大半を死滅させ、食物連鎖も破壊される。
地球から二十パーセク(約六十五光年)先という比較的近くで超新星爆発が起きた場合、爆発時に放射された紫外線、X線、ガンマ波だけでなく超新星に加速された宇宙線が地球に飛来することで、地球は最長で十万年続くダメージを負う可能性がある。
この第三ユニバースと呼ぶマルチバースのひとつで極超新星爆発が起こった。それは第三ユニバースの地球の属する銀河系からはるか離れた銀河団で起こったもので、生じたガンマ線バーストは方向がそれていたために、その銀河系にも第三ユニバースの地球に住む全生物、人類にも影響はなかった。ところが、あまりにも大きな爆発であったために、時空のゆらぎが生じた。第三ユニバースの軸がぶれた。そして、第三ユニバースに隣接する第一ユニバースと第二ユニバースに第三ユニバースの軸が触れたのだ。
その際に、物質的な影響は極微であった。極超新星爆発の瞬間的なエネルギー放出は非常に短時間に行われ、それが物質的影響を免れさせた。しかし、その影響は、第三ユニバースの幾多の銀河団に生息する生物の思念・記憶を第一ユニバース、第二ユニバースに飛ばしてしまった。どうしてそのような現象が起きたのかは、未来に検証する必要があるだろう。だが、生息する生物の思念・記憶がエネルギーとして圧縮され、パケット通信のような形で、第三ユニバースから第一ユニバース、第二ユニバースへとダウンロードされてしまったのは確かだ。そして、第三ユニバースと類似の存在の生物が生息する第一、第二ユニバースの生物にダウンロードされてしまった。
極超新星爆発で、ガンマ波バースト放射が続き、ユニバースの軸がぶれ、振れ動いている時、各ユニバースで落雷が発生している場所で、それぞれのユニバースのアキヒコと手を握っている人間に対して、並行宇宙間の記憶転移は起こる。
このおかしな現象に気づいた湯澤研一は、明彦の手を取って落雷の現場に立ち尽くす。しかし、何も起こらない。明彦は研一に「ホラ何も起こらないじゃないか?」という。しばし、考える研一。「そうか、わかった。つまり、明彦、第一、第二ユニバースは、どんな気まぐれなのか、ボクという存在はない。そういうことだ」
研一は実験を続け、洋子と明彦にさらに手を触れ合わせさせ、落雷を待つ。次第に記憶転移の間隔が短くなり、とぎれとぎれに第一、第二ユニバースと記憶を共有していく洋子。その洋子の記憶をたどりに、第三ユニバースの森絵美を探し出そうとする研一。
そして、研一は、何故落雷時に明彦と手が触れ合った人間は記憶転移が起こるのかを発見する。その理論に基づき、記憶転移をリアルタイムで発生させる装置の開発に取り掛かる明彦と研一。